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フジテレビ:あいのり(キリマンジャロ登山編)

2004年6月14日〜6月21日

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「あいのり」 聞いたことはあったが、番組を見たことはない。ということで、フジテレビから「あいのり マダガスカル編」が送られてきた。これを見て勉強するように、ということらしい。ボーっと何も考えずに見るだけだと、面白い。2回目は裏方のスタッフを考えながら見てみた。これは一日中、ずっーと撮影しているのか?カメラマンは、何時休むんだろう?台本ってあるの?(メンバーの誰かも聞いていた)。と、色々な質問が頭をよぎっていく。

この仕事は、タンザニアのダルエスサラームにある旅行会社「JATAツアーズ」から紹介されたもの。タンザニアでも他の土地をたくさん周ってくるのだが、僕が頼まれたのはキリマンジャロ登山。

余談だけど、妻(タンザニア人)に「今度の撮影は、男女が一緒に世界中を旅行して、恋人を見つける番組だよ」と言うと、少し考え込んで「恥ずかしくないのかな?本当じゃないんでしょ?」。僕だったら恥ずかしいよな、台本なかったから本気でやってると思うけど。スタッフに聞いてみたかったが、怒られると嫌だったからヤメタ。結局今でも分からない。

6月14日 

マラングホテル(モシ)で「あいのり」軍団と合流。ピンクのワゴン車と、シャトルバス一台。しかしあのピンクワゴンは目立つ。近くにいるだけでも、恥ずかしい。ちなみに今回のワゴンは、ナイロビ(ケニヤ)の車を仕立てたらしい。

メンバー7人、スタッフ6人(ディレクター1、アシスタント2、カメラマン2、音声1)、コーディネーター3人(日本人2、タンザニア人1)。そして、ナイロビから「世界遺産 」で一緒 にキリマンジャロに登った井上カメラマンも加わり、総勢17人のグループ。

私と井上カメラマン以外のメンバー・スタッフ全員が、登山装備なし。ということで、登山ゲートの中にあるレンタル屋へ押しかける。装備一式を借りる人も少ないだろうから、前もってレンタル屋の親父には、十分な数の装備を用意しておくように伝えておいた。撮影をしながらの品定めは、予想以上に時間が掛る。スタッフの分は、適当に選び袋に詰め込む。そうとう儲かったのだろう。引き上げる時に見たレンタル屋の親父は、満面の笑顔で手を振っていた。

6月15日

登山初日だ。といきなり問題。ホテルの給水ポンプが止まり、断水に。山に入ると、寒さで体を洗うどころではないので、是非メンバーにはシャワーを浴びて出発させたい、というディレクターの親心のため、水がでるまで延期。すぐに機械は直り、シャワータイム。

午前10時ごろ、マラングホテルを出発。マラングゲートでチーフガイドのアロンとその他サブガイド、コックとポーターで計52名の登山スタッフと合流。撮影機材などの重要な荷物を運ぶポーターだけ、僕が選んで、後の荷物仕分けは、アロンに任せる。

そして登山手続きを済ませ、僕たちと一緒に行動する機材を運ぶポーターの荷物計量をしていると、ディレクターが何を勘違いしたのか、「出発!」と合図を出す。撮影をしているので、待ってくれとも言えず、大慌て。お陰で手続きを最後までやっていない、と後で怒られた。

カメラはデジカメなので、カメラマンが常に持ち歩いている。7人のメンバーがカップルでばらけてきたら、3人のカメラマンがそれぞれのカップルに付いていくというシステム。その日の目的地までの間を4箇所に区切り、4分の1撮影したら、次の4分の一はメンバー男女別れて撮影なし。そう撮影してない時は、メンバー男女は話をしていけないのだ。これが結構徹底していて、ホテルの部屋でも、男と女の部屋の間にスタッフが部屋を取り、夜こっそりと、が無いように監視しているということ。

と言う感じで、撮影する、撮影しない、を繰り返しながら登っていく。こうなると結構先頭と後ろの距離が開いてしまうので、スタッフは無線で交信している。僕はずっーと一番後ろにいたけど、この無線のお陰で、結構楽しめた。「何君が、何ちゃんと2ショットだ。狙え!」とかね。

初日は、何の問題もなく、遅れる人もなく、全員一緒に一日目の宿マンダラハットに到着。

普通なら、これで今日の仕事は終わり、となる所だが、「あいのり」はそうはいかせてくれない。

夕食を撮影することに。これがめんどくさい。今からスープが行きます。その後にスパゲティです、と無線連絡を入れる。しかも小屋の中に入ると、映ってしまうので、寒い外でメンバーの食事が終わるのを待つ。

夜中11時に相棒の千穂コーディネーターがドアをノックする。「沼っちが、気分悪いそうです」と。この標高でかよ、と急いで駆けつけるが、大したことはなさそうでホッとする。

そうこの沼っちと、彼女が想いを寄せている祐君がキリマンジャロ登山の主役。キリマンジャロの頂上で、告白というクライマックスを狙っているのだ。登山前にディレクターが「この二人以外は、脱落してもOKです」と仕事人の目をして言っていた。

6月16日

ここから登山道も急な坂が多くなり、息苦しさを感じ始める。森を抜け、開けたところを歩くので、太陽が出ていたら陽射しがキツイし、天気が悪ければ、寒い。登山しているのを自覚し始める日だ。

案の定、メンバーもばらけだす。早くスタスタと歩く順平や、最後尾をゆっくりゆっくりと登る瀬利葉とその横で彼女を励ますイッチー君。ヒデ君は、放送されたテープを見たらとても個性的で面白い子だが、僕は全く彼のことを覚えていない。大人しい人だな、としか。あんなに面白いやつだったとは、驚きだった。まあコーディネーターとメンバーの間には、撮影スタッフがいて、ほとんど話す機会は無かったからしょうがない。

ここで内輪の事件発生。井上カメラマンが足を挫いてしまったのだ。片足を引きずりながらの登山、とても痛そう。彼はキリマンジャロ経験者なので、他のカメラマンが脱落した場合に備えての「絶対に登頂をしなくてはいけないカメラマン」なのだ。ちなみに僕もチーフコーディネーターなので「絶対に登頂しなくてはいけないコーディネーター」。 周りからの見えないプレッシャーをお互い感じていた。井上さん、口では「これは頂上まで行けない」と言っていたが、根性で歩き続けていた。

今夜の宿、ホロンボハットに時間は掛ったが、全員無事到着。ここで今日と明日の2泊。明後日まで登らなくて済むとなると、気が楽になる。

夕食が終わり、休憩しようとすると、無線で集合が掛る。「ヒデが、沼っちと話をしたいそうです」撮影中以外では、男女間の会話を許されないあいのり。誰かと話をしたい時は、ディレクターに報告して、カメラを設置してから、相手を呼び出してもらうのです。

また寒い外で待ち。30分ほどで終わったと思ったら、「ヒデ、今度は瀬利葉を頼んでいます」。おいおいである。更にヒデが終わると、今度は「イッチーが、瀬利葉だそうです」。もういい加減にしてくれー、寒いよ。

最後は、「全員で夜空を眺めて、話をしたいそうです」。どうにでもしてくれ。部屋に戻ったのは、11時過ぎていた。

6月17日

登山3日目、休憩日。

ADさんに、大喝采。お昼にカップラーメンを食べさせる、とバックの中を見ると、50個ほども入っている。ラッキー。これは余りを貰えるな。何年振りだろう、日本のカップラーメンなんて。しっかりお昼と夜食として頂く。美味いな。

午後は2ショット撮影。カップルで話しているのを撮影するのだが、これが難しい。3組同時に撮影していて、メンバーが動き回るので、そのカメラに入ら ないように、常に周りを注意して見てないといけない。僕が付いたのは、沼っちと祐君カップル。しかし場所が悪い。テントを張る場所のど真ん中にある岩に座り込んでしまった。テントを張りたいポーター達と、僕の「もう少しで終わるから待って」という攻防が始まる。が、なかなか二人は立ち上がらない。ポーターも言葉では抑えれなくなり、お金を少し渡して待ってもらう。この標高3000m以上の陽射しの中でよく1時間以上も座っていられるよな、と感心する。

この日は、特に問題もなく過ぎたな、と思ったら、順平が夕食に来ない。部屋に行くと、白目を真っ赤にして、寝込んでいる。悪寒と熱がある様子。高山病ですね。マラリア予防薬を飲んでいるので、薬はどうしようか迷うが、熱を下げて寝てもらいと、明日からの登山が難しくなると思い、解熱剤を飲ませる。それと、とにかく水を飲めるだけ飲むように、再度忠告する。

6月18日

順平は、熱が下がり、元気を少し取り戻した様子。ただああいうタイプは、弱い部分を人に見せたくない(特にテレビ出演中)ので、やせ我慢してがんばってしまうだろうから、少し彼を注意していた。忠告どおり、水をたくさん飲んで、たくさん出していたので、安心する。

井上カメラマンは、昨日の休憩日が幸いして、足の痛みは和らいだ様子。少し引きずってはいるが、大丈夫そうだ。

天気は良好。5月の「世界遺産」の時は、雲に隠れて全く姿が見えなかったキボ峰がきれいに見れる。1ヶ月前にこの道を下った時に、この景色が見れてたら良かったな、とふと思う。

さて、「あいのり」軍団はそんな景色を楽しむ感じではない。標高も4000mを越え、息苦しさと戦っている。特に女性達は苦しそう。最終ハットのキボ手前の最後の坂を、皆で手を取り合いながら登りきる。「ヤッター!」みんなで抱き合って、喜んでいる。沼っちは涙を流している。ここからが正念場なんだけどな、とはもちろん言わなかった。

ここで内輪の事件がまた発生。タンザニア人コーディネーターのアレックスさんが、いないのである。何処に行ったのか?どうも足を痛めたのと、高山病のためホロンボハットを出なかったようである。おいおい、それならそうとひとこと言ってよ、である。

目的地がギルマンズポイントまでなので、明日の出発は遅めの早朝2時。さすがの「あいのり」もここでは撮影なし。僕は早速近くの岩に登り、オフィスと奥さんに電話を入れる。

夕方5時に夕食が食べるが、メンバーもスタッフもほとんど食べることが出来ない。ヒデ、祐君、順平、沼っち、瀬利葉、ADさん1名、音声さん、ディレクターと半数以上がダウン気味。特に沼っちがヤバイ感じ。

夜、僕が外で歯を磨いていると、誰かが飛び出してきて、歩きながら吐いている。器用な人だな、ヒデだった。確かにカップラーメンの食いすぎもあるんだろう。順平の体調もあまり良くはない様子。だが1時間おきにトイレへ行き(吐いているのか?)、戻ったら水をガブガブ飲み、ベットに寝る、を繰り返していた。忠告通りに水を飲んでくれるのはありがたいが、ダッシュでトイレへ行くので、その度に起こされるのには困った。

音声さんは、頂上は目指さずに、準備のため一日早く下山することになっているので、15名での出発になる。

出発してすぐにメンバーがばらける。沼っちは最後尾で、とてもきつそう。数歩進んでは、止まるを繰り返している。無理そうだな。このままだと一緒にいるイッチーと瀬利葉も時間的に登頂が難しくなるな、と考えていると、沼っちが座り込む。吐きたくても、吐けないで苦しんでいる。吐きつくして、お腹は空っぽなんだろう。ディレクターに、下山させましょうと伝える。一瞬、「えっ、頂上での告白は?」という雰囲気になるが、そんなことは言ってられない沼っちの症状。ディレクター、カメラマン一人とアロンが沼っちと下山する。

イッチーに励まされながら登っている瀬利葉。息苦しそうであるが、高山病には罹ってない様子。これはいけそう。

待ち合わせポイントに着くと、ヒデがいない。どうも先に行ってしまったようである。サブガイドが付いているはずだが、大丈夫かな、と心配していると案の定、ガイドに抱えられてヒデが降りてきた。高山病に罹っていたADの一人も、ここでヒデと共に脱落する。

このヒデの脱落は、今も悔しい。僕にも責任があるからだ。もしあの待ち合わせ場所で、待っていてくれたら。そして皆で励まし合いながら、一緒に登ることが出来たら、と考えてしまう。サブガイドには待つように伝えてあったのだが、多分寒くて待ってられなかったのだろう。

残りは、メンバーの順平、祐君、イッチー、ユカ、瀬利葉。スタッフは、AD1人、カメラマン2人、コーディネーター2人。計10人になる。

ペースはとてもゆっくりだが、もう吐き気を催す人もいなくなり、こうなるともう大丈夫のはず。

朝9時30分、10人全員がギルマンズポイントに到着できた。

終わったー。無事に登れた、と僕もホッとする。

「沼っちの告白」

さてさて、頂上での告白が出来なかった沼っち。これはスタッフが大変。新しく告白と待ち合わせ場所を探さなければいけない。

告白は、沼っちが泊まっているキボホテルの部屋で、下山してきた日に。翌日に近くの教会の前で、待ち合わせをすることになる。

告白された祐君を、夜ディレクターが訪ねる(祐君は、一人で別のホテルに泊まっている)。僕はいつものように、外で待つ。1時間ほど祐君と話して出てきたディレクターが「なんだよ。 それなら態度でしめせよ」と怒っている。あれ、答えが分かっちゃた。

その通り、翌日の待ち合わせで、祐君は沼っちにごめんなさいでした。

この後、沼っちとADさん一人に付き添って、アルーシャの町まで送ることになっている。振られた後の彼女と過ごす車中、どんな雰囲気になるのか不安。という気持ちを吹き飛ばすように、お弁当のサンドイッチをたいらげていた。さすが沼っち、立ち直りが早い。それとも、やはり筋書き通り・・・?。分かりません。

 

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